海外移住の注意点!源泉課税と居住国課税について

2019年4月10日水曜日

移住先候補 税制

海外移住を検討するに当たって避けて通れない税金についてです。

今回は、個別事例を検討する前の準備として、国際課税の基礎についてまとめます。

※ここでは所得税に的を絞っています。

まず、考えなければならないのが、居住国以外の国で生じる所得についてです。

この場合、原則として、下記のように二重課税が生じます。
  1. 所得が生じる国での源泉課税
  2. 居住国での課税(所得税)
この二重課税を緩和するための二国間合意が租税条約です。

一例を挙げますと、日本居住者が米国株式から配当を得る場合は、
  1. (米国で)米国株式の配当に対する源泉課税(10%)
  2. (日本で)米国の源泉課税後の額面に対して、20.315%の配当課税
の二重課税を負いますが、確定申告すれば外国税額控除によって1の源泉課税分(の一部)については還付を受けることができる、という制度になっています。

ポイントは、二重課税の負担を完全に無効化できるものではなく、少し軽減される程度で、二重に課税されることに変わりはない、という点です。

先に二重課税され、後(確定申告)で還付という点でもデメリットと言えます。




居住国が変われば状況も変わる
米国株投資家であれば、当然のように認識している上記の二重課税ですが、なぜこんなことが起きるのかと言うと、日本が国外所得をも課税対象としているからです。
(日本に限らず先進国はどこも同じですが…)

どういうことかと言うと、世界には国外所得を非課税としてる国もあり、その場合には、二重課税の問題は生じないのです。

そのような国の居住者となれば、所得が生じる国での源泉課税のみとなります。

富裕層なんかが日本を離れるのもこれが理由ですね。一般的な節税方法として知られています。(個人的には二重課税の回避であって、「節税」という表現は正しくないようにも思います)

アジア圏で、国外所得が非課税な国として有名なのが、シンガポール、マレーシア、香港です。

つまり、これらの国で「居住者」として認定され、日本で「非居住者」として認定されれば、海外で得た所得に対しては、現地の源泉課税だけで済むということになります。


居住国はどう決まる?
ここで重要なのが居住者/非居住者の認定です。

世界的には183日以上滞在している国を居住国とする考えが一般的です。

この滞在日数だけで、居住者認定する国もあれば、財産の配分や、所得の有無、家族の所在地などから総合的に判断する国もあります。

大別すれば日本は後者に当たります。

日本の場合は、「居住者」を以下のように定めています。

「居住者」とは、日本国内に「住所」があるか又は現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいいます。

ただ、滞在地が複数存在する場合は注意が必要で、国税庁のHPでは、以下のように説明されています。

ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになります。
(注) 滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。

そして、外国Aと日本で共に「居住者」と認定される場合は、租税条約に基づき判断される、とも添えられています。

つまり、外国Aで「居住者」になれば、即ち日本の「非居住者」になるというわけではない、ということです。

悪質な節税を防止するため、このような注意書きが必要になるわけですが、普通に外国に移り住み(生活実態があれば)、その国で「居住者」と認定されれば、それを根拠に日本では「非居住者」として認定されると思われます。


ポイントを整理すると、
  • 居住国が国外所得を課税対象としているか。
  • 複数の国に滞在する場合は、どこの国の居住者となるのか。
  • 居住国と源泉国(所得が生じる国)との租税条約の内容。
この点を確認することが重要という訳です。

この点について、凄く分かりやすくまとめられているサイトがありましたので、紹介します。



次回は、マレーシアに移住した場合に、具体的にどのような課税になるのか考えてみます。