見逃しがちな海外口座のデメリット…損益通算不可

2018年9月17日月曜日

Firstrade 税制


先日、Firstrade証券で口座を開設し、海外口座での投資に一歩を踏み出しましたが、看過できないデメリットがあることが発覚しました。

海外口座での取引の場合、なんと国内口座との損益通算不可らしいです。



ある方のブログで知って、国税庁のHPで調べてみましたが、なんともややこしかったので、ここで整理してみます。


まず、問題となるのが上場株式の定義です。


国税庁のHPで、上場株式の定義について説明があります。
No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)


これを見る限り、米国株式も上場株式の枠組みに入ると考えられます。


一方で、「上場株式」の配当については、こう図解されており、


文章でも「上場株式等の配当等については、15.315%(他に地方税5%)の税率により所得税及び復興特別所得税の源泉徴収が行われます。」と説明されてます。


これを見る限り国税庁が定めてる「上場株式」の場合、配当においては例外なく源泉徴収されるということです。


逆に言えば、源泉徴収されない場合は、国税庁が定めてる「上場株式」には該当しないということになります。


そして、海外口座の場合は、源泉徴収されません。

ということは、海外口座での売買の場合、国税庁の定めてる「上場株式」の枠組みには入らない可能性があります。


決定的なのは次の記載です。
上場株式等を金融商品取引業者等を通じて売却したこと等により生じた損失(以下「上場株式等に係る譲渡損失」といいます。)の金額がある場合は、確定申告により、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額(上場株式等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限ります。以下「上場株式等に係る配当所得等の金額」といいます。)と損益通算ができます。また、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除することができます(引用元)No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

赤字にした部分がポイントです。


因みに、金融商品取引業者等とは、金融商品取引業を行うため、金融庁に申請・登録を受けた業者のことを言います。


海外の証券会社は金融商品取引業者として登録されていないことがほとんどです。


つまり、以上の国税庁の説明を総合すると、こう考えられます。


国税庁が認めてる「上場株式」における優遇は金融商品取引業者を通じて取引を行った場合に限られる。


国の認可を受けていない業者を通じて売買する場合は優遇制度は認めません、ということです。


これが国税庁のHPや税理士の方々のブログを見て調べた上でのジブンの見解です。


こう考えれば税理士の方々が説明されてる次の事実と矛盾しません。


海外口座での税処理ポイント

  • 譲渡損失がある場合でも国内口座との損益通算は不可。
  • 海外口座内もしくは海外口座同士の譲渡損失と譲渡益であれば単年に限り損益通算可能。
  • 海外口座内もしくは海外口座同士でも譲渡損失と配当所得は損益通算不可。


これが事実のようです。


この結論を調べる過程で分かった事実も書いておきます。

  • 原則、損益通算は同一の税区分内において認められている。
  • 上場株式と一般株式(上場株式以外)では税区分が異なる。
  • 譲渡損失と配当所得の損益通算は、特例として上場株式においてのみ認められている。(譲渡益と配当所得は税区分が異なるため、通常、損益通算は不可と解釈される)
  • 上場株式の譲渡損失においては、同一区分の譲渡益に対して損益通算が行われ、それでも譲渡損失分が控除しきれない場合において配当所得との損益通算と3年の繰越控除が認められる。
  • 上場株式の譲渡損失と配当所得との損益通算は、配当所得において申告分離課税で申告した場合に限られる。
  • 上場株式においては、自身が保有する全ての株式に対して、自身が選択した配当所得の課税方式(総合課税or申告分離課税or申告不要)が適用される。
  • 一般株式の場合(上場株式以外)、1回に受け取る配当額が〈10万円×配当計算期間の月数÷12〉以下であれば確定申告が不要(四半期配当であれば1回の配当が2.5万円以下)。

(補足)
上記の通り、一般株式においても確定申告不要制度は活用できますが、これも源泉徴収ありが前提ですので、海外口座には適用されません。



まとめ

海外口座の場合、金融商品取引業者を通じた売買ではないため、「上場株式」という扱いにはなりません。


そのため、「一般株式」に該当すると考えられますが(上場株式以外を一般株式と定義しています)、国税庁のHPでは「一般株式」においても配当所得は源泉徴収することを規定しています。


つまり、源泉徴収されない海外口座を通じての売買については、国税庁は言及していないと言えます。



言及されていない以上、確定申告は不要と考えたくなりますが、それも危険です。


そんな抜け道を国が見逃してくれるはずがありません。


配当所得の確定申告不要制度なども源泉徴収ありが前提の制度と考えれば、源泉徴収がない海外口座についても申告しておいた方が無難でしょう。


改めて再掲します。



海外口座での税処理ポイント

  • 譲渡損失がある場合でも国内口座との損益通算は不可。
  • 海外口座内もしくは海外口座同士の譲渡損失と譲渡益であれば単年に限り損益通算可能。
  • 海外口座内もしくは海外口座同士でも譲渡損失と配当所得は損益通算不可。

海外の上場株式から得た所得だとしても、海外口座を通じての取引の場合、国税庁が定めている「上場株式」としては扱われない。



(免責)
以上は個人的な見解で、正当性を保証するものではありません。

正当な税務処理については税理士に確認して下さい。


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